今日は、リビングの書棚の打ち合わせ。
すいぶん前に頼まれたのだけど、忙しすぎて、手がつけられなかった。
家具デザイナーと、遅めのランチしながら、夕方すぎまで話し込んだ。
家具の話や仕事の裏話とか、面白い時間だった。
本物の大事さを、我々が伝えていかないといけないなあと、あらためて痛感したのである。
というのも、こんな話を聞いたのだ。
その家具デザイナーは、ハンス・ウェグナーのYチェアをダイニングで使っているそうだ。
ときどきオイルで拭いたり丁寧に手入れをしているという。
そしてその様子を、あえて、子どもに見せている。
なぜ、なのか。
親が物を大切にする姿を、子どもに伝えるため。
とくとくと子どもに説教したり、子どものいたずらを叱り飛ばさなくても、
親の生き方を子どもに見せれば、ちゃんと伝わるのだ。
彼の息子は、あちこちいたずら描きするやんちゃ坊主だそうだが、
やはりYチェアには手を出さないという。
この話を聞いて、ふと思った。
親が物をぞんざいに扱えば、子どももそうなる、よね。
たとえば、若い母親たちが読む人気雑誌に出てくるようなインテリア。
使い捨て家具や、安価で、ほどほどおしゃれなブランド家具をそろえることに、
私はあえて反対はしない。
でも、せめて1万円でもいいから、本物をひとつ部屋の中に置いて、
大切に扱う暮らしをしてほしいと思う。
例えば、丸い提灯のペンダントがIKEAで3000円位。
でも、本物のイサムノグチのペンダントは1万円弱。
1週間、ランチを前日の残り物弁当でしのいだら差額は出る、とそのデザイナーは言った。
まったく、その通り。
似て非なる物で済ませるか、せめて頑張れば手に入る本物を身近に置くか。
子どもに与える影響は計り知れないと私は思う。
子どもがいるのに高価なものなどおけない。子どもに壊されるのはいや。
その気持ちはわかる。私だって、さんざん子どもに大切なものを壊されてきた。
でも、子どもが触って壊してしまったとき、怒らずに悲しい顔をして、
慈しむようにそれを片付ける親の姿を見たら、
子どもはそこで、物を大切にする心を学ぶ事ができると思うのよね。
実際、大きくなった私の子どもたちは、
本物のよさを理解する心をもち、物を大切にするスタイルをしっかり身につけてくれた。
彼らはそれをまた、自分たちの子どもにもちゃんと伝えている。
生活の真の豊かさのためにも、子どもの将来のためにも、大事なことではないだろうか。
子どもは、小さな大人なのである。